希望ヶ丘の個別指導塾「AO入試プロ」

2018年度作文コンクール受賞歴

合格
生徒
出身高校
神奈川県立瀬谷高校(現役)
入塾した時期
2017年8月
合格した大学
【国際福祉医療大学 小田原医療保健学部 作業療法学科】合格
安全振興作文コンクール最優秀賞(応募総数:1025作品)を受賞しました
合格後の声

受賞作品の全文

【タイトル:「日常」をリハビリする】

 「お前もやってみろ」と、少々荒っぽく声をかけてきたのは、元板前の老人だった。ちょうど箸をつかった奇妙な作業中に、わたしは横浜市にある病院のリハビリ室に足を踏み入れていた。理学療法士の両親が、ある病院の紹介者を通じて、わたしに病院見学を勧めたのだ。作業療法士の職業に何気ない関心を抱いていたわたしにとって、それは思わぬ形で実現することになった。
 入り口の自動ドアを抜けて待合室がある。その床に貼られたカラフルなテープは、患者が迷わないように病院内を少し大げさに誘導している。わたしもこのテープに案内され一室に入った。元板前の老人は箸をつかって豆に模してつくられた人工的な材質をつかみ取る地味な作業をくり返している。「自助具」と呼ばれるその箸は、トングのような形をしていて、リハビリ専用に作られている。声をかけてきたのはそのときだった。いつの間にか、老人にリハビリをしていた作業療法士は消えている。老人はどうやらこのタイミングを見計らっていたかのようだ。この単純に見える作業に飽きていたのかもしれない。老人が手渡してきたものは、「自助具」ではなく、ごく普通の箸だった。
 スムーズに作業を進めるわたしの本音は、やわらかく老人の話に乗る、そんな時間として受け止めた。「箸の使い方が違うな」という言葉の背後には、老人の「ある期待」のようなものを感じる。一本だけの箸だけを動かすのではなく、二本の箸を同時に動かすのが正しい、と老人は言う。いわゆる、最近の若い者は…、という皮肉交じりを感じ取ったことで、老人の「ある期待」の中身がはじめて理解できた。その直後に一言。「俺はもう麻痺のせいでできないんだ」老人は麻痺した片腕をわたしに見せて笑った。正直、これにはなんて返したらいいかわからない。その乾いた笑みは、どこか不自由になった身体の不思議を面白がっているようにも見えた。
 「患者のやりたいことをやらせてあげることが治療になる」わたしを案内した作業療法士は言った。最初、その言葉の意味がわからなかったが、ふと、病院見学を経てわたしはこう考えるようになった。老人がしていた箸を使ったリハビリは日常生活を支障なく送るうえで重要だ。けれど、元板前の老人にとって食生活に関わるリハビリはそれ以上の意味を持っている。これは老人が「日常」を取り戻そうとする意欲につながるのだろう。あの作業療法士は生活なかの基本的な動作を回復させるとともに、老人の日常にあった記憶を呼び覚まそうとしていたのではないだろうか。「患者のやりたいこと」とは患者が唐突に失ってしまった「日常」を思い出させるような作業であり、それを支援するのも作業療法士にとっての治療だとわたしは考えた。
 「お前もやってみろ」という言葉から荒っぽさが消えた。この瞬間、わたしの何気ない関心は、はっきりとした目標に変わった。                

合格後の声
合格
生徒
出身高校
神奈川県立瀬谷高校(現役)
入塾した時期
2017年3月
合格した大学
【東京農業大学 国際食料情報学部 食料環境経済学科】合格
安全振興作文コンクール優秀賞(応募総数:1025作品)を受賞しました
合格後の声

受賞作品の全文

【タイトル:ゲンジボタル×テニス=「光」】 

 ローファーで走ったのが間違いだった。大粒の砂利が靴底をグイグイと押し上げてくる。足裏がとにかく痛い。弟の足が急に速くなって、途中でわたしは音をあげた。でも駐車場から走った甲斐があったというものだ。ゲンジボタルがそろそろ光を灯す頃になんとか間に合う。前日の雨でジメジメとした重たい空気かと思いきや、ワイシャツを肘までまくり上げた両腕から感じる温度は妙に心地よい。あたりに六月の風はなかった。全力ダッシュは疲れたが、どこかワクワクしてる。ひさしぶりに身体を動かしたら、先月、団体戦の2―1で惨敗した悔しい引退試合がドロリと脳に流れ込んできて、「いや~な」気分になる。もういい。あれはすでに終わったこと。
 十メートル先にいた親戚の顔がわからなかったほどの暗闇に、小さな光の群れが見える。灯しては消えてをくりかえし、その明滅が放つ生命力はけっして弱くない。小さな生き物にとって、人間の日常で生きることは簡単ではないはずだ。わたしが悩んでいた「日常」はこれに比べるとなんとも、お恥ずかしい。
 一年生の時にはテニスをすることが純粋に楽しかった。期待もされていなかったし、じぶんだけのことを考えて、ただボールだけを追っかけていればよい単純な日常だったから。二年生になると何もかもが重くなった。2リットルの水が入ったジャグも倍ぐらいに重たく感じる。朝、起きるのもつらい。どれもこれも、部活に行くことが憂鬱になった。この時期には部長としての責任という、重たい、重たい、「ヘルメット」をかぶらなくてはいけなくなった。周囲やら顧問の先生からの厳しい言葉を頭上から守らなくてはいけない。だから、頭がとにかく重たく感じたのだ。
 ゲンジボタルは環境の変化に敏感な昆虫のために、「指標昆虫」に指定されている。部長になれば、その人物が部の代表者、標本とされる。わたしは世界一、部長っぽくない「見せ物昆虫」だと思っていた。
 でも、テニスコートに立てば、澄んだ解放感がわたしを癒してくれる。対戦相手はわたしを左右に動かそうとして、意地悪にボールを打ってくる。そのぶん、ありがたく、がむしゃらに追っかける。たった一球で相手の感情、思いが伝わってくるような気がした。『イライラする』『もう疲れた』『生意気な奴め』みたいなメッセージが相手から届くような気がするのだ。だからわたしは、どんなところに打たれても、残り少ない力を振り絞ってでも走り、腕いっぱいにラケットを伸ばして相手の心をキャッチしたかった。そのボールに熱中する瞬間だけが、わたしを輝かせてくれるのだから。ゲンジボタルは生涯でたった二週間しか光を発しない。わたしが経験した「光」はどのくらいのあいだ輝いたのだろう。それがどれだけ短い時間でも、その輝きはいつでも想い出せる。これからどんな辛いことが待っているのかな…。でも、わたしにはこの「光」がある。だからきっと大丈夫!

合格後の声
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